非常照明の照度範囲とは?注意点と選び方!

非常用照明の照度範囲と選び方 照明器具
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非常照明の照度範囲とは?

非常照明は災害等による停電など非常時に点灯し、素早く避難できるように設置が義務付けられています。

建築基準法では、非常照明の照度の基準として、1ルクス以上(蛍光灯・LEDの場合2ルクス)の照度を30分以上保つことが定められいます。

この記事では、義務付られている非常照明の照度の範囲について、その手順とともにできる限り具体的に解説をしていきます。

非常照明の照度範囲と照度を正しく知る!

先に述べたように、非常照明の設置に関しては、建築基準法(国土交通省)に置いて、設置義務の必要な対象建築物が決められています。

非常照明の設置の設置対象建築物と設置義務のある部分、免除部分に関しては、下記記事を参照してください。

非常照明(非常灯)とは‐ヨナシンホーム
非常照明は建築基準法によって、地震や火災などの災害、また、事故などで停電が発生した時に、誰もが安全に避難するために通路や居室に一定の明るさを保つための設備です。誘導灯も火災などの際に必要なものですが、用途も違い、法律も変わります。人の命を預かるものですので、規格にあったものを選ぶ必要があります。

災害等の非常時に非常照明を点灯させて、30分以上床面の照度を確保する必要があるため、光の有効な範囲を確認しながら設置をする必要があります。

照度については、床面においての水平照度で1ルクス(蛍光灯・LEDの場合2ルクス)以上確保できることが条件になります。

ちなみに、各メーカーより非常照明を選定する場合、照明器具の取付位置(高さ)と配置(単体・直線・四角)により、床面で必要な照度に対応した床面に描かれる円の半径がわかります。

非常照明の配置表の見方

わかりやすいように、実際のメーカーの製品の配置表を参考に解説していきます。

表1.配置表(例)LED低天井小空間用(~3m)※1 保守率0.92 ※2 230lm

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m
単体配置 A1 3.8m 4.0m 4.0m 2.8m
直線配置 A2 8.5m 9.4m 9.9m 10.1m
四角配置 A4 6.9m 7.6m 8.1m 8.9m

器具取付高さは文字通り、非常照明が設置されている高さ(多くの場合天井高)です。

単体配置・直線配置・四角配置は非常照明を設置する配置の状態を表しています。

※1 保守率とは、照明の設計を行う際の一定時間経過後において必要な明るさを確保するための補正係数のこと。
照明器具を長時間使用していると、ランプの光束低下や照明機器の汚れ・天井や壁の汚れ等によって照度が低下します。
その低下を補うための補正係数です。

※2 lm(ルーメン)は光の明るさの単位で光源がすべての方向に放射する光の量の値を表しています。
つまり、この数字が大きいほど明るくなります。

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単体配置・直線配置・四角配置の照度範囲のイメージ

実際に上記の非常照明の配置には単体配置・直線配置・四角配置の3つの配置方法が考えられます。

わかりやすいように、この記事では非常照明器具の設置取付高さを2.4mとした時の、それぞれの配置のイメージの例を挙げてみました。

単体配置

高さ2.4mの時の単体配置は図1のようになります。

図1.単体配置の配置図

非常照明 単体配置 部屋の広さ

室内に梁・柱などの障害物がない場合

非常照明の床面の照度範囲は左記の通り(黄色点線)となります。

緩和される範囲があるため、部屋の一辺の長さ

L≒6.56mが最大値となります。

ちなみに、上記については、下記の手順にて緩和部分の長さを1mした時の、最大の部屋の広さを求めました。

非常照明 単体配置 部屋の広さ求め方

表2.単体配置の照度範囲を表す表

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m
単体配置 A1 3.8m 4.0m 4.0m 2.8m
直線配置 A2 8.5m 9.4m 9.9m 10.1m
四角配置 A4 6.9m 7.6m 8.1m 8.9m

直線配置

高さ2.4mの時の直線配置は図2のようになります。

図2.直線配置の照度範囲の配置図

非常照明 直線配置 図

表3.直線配置の照明範囲を表す表

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m
単体配置 A1 3.8m 4.0m 4.0m 2.8m
直線配置 A2 8.5m 9.4m 9.9m 10.1m
四角配置 A4 6.9m 7.6m 8.1m 8.9m

四角配置

高さ2.4mの時の四角配置は図3のようになります。

図3.四角配置の照度範囲の配置図

非常照明 四角配置 部屋の広さ

室内に梁・柱などの障害物がない場合

非常照明の床面の照度範囲は左記の通り

(黄色点線)となります。緩和される範囲があるため

この場合、部屋の一辺の長さ

L≒16.13mが最大値となります。

単体は配置と同様に緩和部分の長さを1mした時の、最大の部屋の広さを以下のように求めました。

非常照明 四角配置 部屋の広さ

表4.四角配置の照明範囲を表す表

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m
単体配置 A1 3.8m 4.0m 4.0m 2.8m
直線配置 A2 8.5m 9.4m 9.9m 10.1m
四角配置 A4 6.9m 7.6m 8.1m 8.9m

ここでは、わかりやすいように単純に正方形の部屋とした場合の数値を求めています。

ただ、実際には上記のような計算をすることはなく、図面上に記載半径で円をプロットし、非常照明の設置箇所を決めていきます。

(参考)

非常照明の照明設計をする場合、逐点法により照度的にもっとも不利な点で、規定となっている照度が確保される必要があります。

図4に示すように、光の光源LにおけるP点における直射水平照度Ehを求めることができます。

図4.光源Lよりθ方向にℓ離れた任意の点Pの水平面照度

    記号の意味
     I:θ方向の光度(cd)
     ℓ:光源Lと点Pとの距離
     H:照明器具の取付高さ

非常照明 逐点法 照度

上図のA・Bから非常照明器具の配光曲線を用いて水平面照度が計算できます。

加えて、保守率、電圧降下による照度の低下も考えて、非常点灯30分後までの規定の照度が維持されるように計算する必要があります。

ただ、現実問題として、逐点法で照度計算をするのは時間がかかりすぎるため、各メーカーによる非常照明器具の配置表を使用することで使用する非常照明機器を選定します。

設置する照度範囲が正しくないとどうなる?

もし、決められた設置基準の条件を満たしていないとどうなるか気になりますね。

非常照明の設置に関しては、建築基準法 第35条に制定されています。

(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
第三十五条 別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。

※ 引用元 E-GOV(総務省行政管理局によって整備、運営)建築基準法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000201

この法令に違反した場合には、以下のような罰則基準があるため、十分に注意が必要です。

表5.建築基準法の罰則規定

法律名 違反内容 罰則内容
建築基準法 建築物の是正命令、
工事施行停止命令等違反
懲役3年/罰金300万円
(罰金1億円※)
構造耐力に係る基準(小規模建築物に係る
ものを除く。)など重大な実態規定違反の設計等
懲役3年/罰金300万円
(罰金1億円※)
建築確認、完了検査、中間検査
に関する違反
懲役1年/罰金100万円
(罰金100万円※)

※ 学校、病院、共同住宅棟の特殊建築物等に係るものに限る

※ 引用元 国土交通省 「建築基準法及び建築士の罰則について」https://www.mlit.go.jp/common/000116324.pdf

設備に適合した非常照明の選び方

そもそも非常照明を設置するためには電気工事士の資格が必要になります。

通常設置している設備の種類・設置数・設置場所は建物によって異なります。

もちろん、資格がない場合でも、非常照明そのものの購入は可能ですが、法令に違反しない適正なものを選んで買うことが絶対条件です。

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非常照明の設置の具体例

ここでは、マンションの1階共用部への非常照明の設置の具体例を挙げて解説していきます。

まずは、マンション1階の共用部の平面図を見てみましょう。

ここで、まずは風除室からエントランスの部分に着目して、非常照明を設置してみましょう。

図5.マンション1階の共用部の平面図
非常照明 照度範囲 なし

わかりやすいようにこの部分を拡大し、部屋の寸法を記載したものか図6です。

図6.風除室からエントランス周辺の拡大図

  非常照明 具体例
拡大されたエントランスに非常照明を設置する場合
天井高が2.5m、包含半径、つまり照射される範囲の
直径が4.0mの下表6の単体配置A1の非常照明(SP-1)
を設置します。

表6.配置表(SP-1)

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m
単体配置 A1 3.8m(SP-1) 4.0m(SP-1) 4.0m 2.8m
直線配置 A2 8.5m 9.4m 9.9m 10.1m
四角配置 A4 6.9m 7.6m 8.1m 8.9m

また、共用部の左半分に設置する非常照明SP-2の照度範囲の配置表は下記の通りです。

表7.配置表(SP-2)

器具取付高さ 2.1m 2.4m 2.6m 3.0m 4.0m
単体配置 A1 4.2m) 4.6m(SP-2) 4.7m 4.9m 3.3m
直線配置 A2 9.3m 10.2m 10.8m 11.9m 12.9m
四角配置 A4 7.4m 8.7m 8.7m 9.6m 11.7m

最初に非常照明を取り付ける位置を決めて、照度範囲が建築基準法に適合するように、順次設置箇所を決めていきます。

最終的な設置箇所は下記の通りです。

図7 .マンション1階の共用部の非常照明設置状況

非常照明 具体的 設置箇所

非常照明の照度範囲を決める際の注意点と選び方

今回取り上げた非常照明の具体的設置例から考えられる非常照明の照明範囲と製品に関する注意点とその選び方は以下の通りです。

注意点

・全体に光が届かないといけない(照射水平面で2ルクス以上を確保)
・梁などがある場合には追加で設置する必要がある

選び方

・天井高を確認する
※パナソニックの場合、下記を参考
表8.取付天井の目安

取付天井高さの目安 ハロゲン電球相当
LED低天井・小空間用(~3m) ハロゲン電球9形相当
LED低天井用(~3m) ハロゲン電球13形相当
LED中天井用(~6m) ハロゲン電球30形相当
LED中天井用(~8m) ハロゲン電球30形相当
LED高天井用(~10m) ハロゲン電球30形相当
LED特高天井用(~16m) ハロゲン電球30形相当

・各製品の配置表より水平面での照射面の包含半径を決める
・順次包含半径より照射を確保できる非常照明を選別する

この際、同じ室内でも間取り等により異なった品番でも全く問題はありませんし、非常照明の購入コストを下げるためにできるだけ、少ない個数で基準をクリアすることを検証しましょう。

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非常照明の照度範囲のまとめ

この記事では非常照明の照度範囲に焦点を当てて、商品選定の際の注意点と選び方について解説しました。

非常照明の設置は建築基準法(国土交通省)に定められた基準があります。

災害時などの有事に非常照明が安全に機能するために、決められた基準を遵守するためにも、正しい知識が必要になります。

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