この記事では、内線規定をもとに分電盤の設置基準についてできるだけわかりやすく解説します。
内線規程とは、電気関連法令に準ずるものとして扱われており、電気設備に関する技術基準を定める省令や電気設備技術基準の解釈を補完するものです。
当然ながら分電盤もこの内線規程に基づいており、分電盤を設置する際に取り扱う際の基準として重要な役割を果たしています。
分電盤の設置基準を知りたい、また設置に関しての疑問を解決したい方は本記事をぜひ参考にしてください。
分電盤の設置基準
初めに記載したように分電盤を設置する際には、「内線規程」について把握をしておく必要があります。
では、具体的に「内線規程(1365-1)」において分電盤の設置する基準を以下に記載していきます。
配電盤及び分電盤は、次の各号に掲げる場所に施設すること
【4つのポイント】
①電気回路が容易に操作できる場所
②開閉器を容易に開閉できる場所
③露出場所(3170ー7(〔分電盤の施設〕)に規定する補助的分電盤を除く。)
④安定した場所
【注意事項】
〔注1〕遮断器の動作時などに迅速かつ的確に操作できるようにするため、戸棚の内部(配電盤及び分電盤として専用のスペースが確保されているものを除く。)や押入などには施設しないこと。
〔注2〕住宅に施設する場合にあっては、緊急時などに容易に立ち入ることのできない場所(便所内など)には施設しないこと。
〔注3〕浴室内などのように、湿気が充満するおそれのある場所には施設しないこと。
分電盤の設置場所についてのポイント
分電盤は使用する設備によって、その設置方法にも違いがあります。
ここでは、使用する設備別に分電盤の設置すべき場所、取付位置、補強の方法、理想的な設計等に分けて紹介していきます。
住宅用分電盤
住宅用分電盤はホーム分電盤とも呼ばれ、外の配線から引き込んできた電気を各階や部屋ごとに分配しています。
設置すべき場所
ブレーカが落ちた場合のことを考えると、復旧を容易にするためにも低い位置に設置する方が良いです。
ただ、多くのブレーカが室内の高い位置に設置されているのには理由があって、粉塵の多い場所で粉塵が機器内部に入り込んだ場合、導通不良を起こしてしまうからです。
その環境に応じて設置位置を決めましょう。
また、分電盤の前に棚などを置くことは止めましょう。
具体的に分電盤を取り付ける場合、粉塵の影響が少ない環境であれば、盤の最上部が2メートルを超えない位置に設置すると、管理が簡単になります。
この高さを超えるとメンテナンスの際に、脚立などを用意する必要も出てきますので、できるだけ操作しやすい高さに設置しましょう。
補強の必要性と方法
住宅用の場合には、使用される分電盤のサイズもコンパクトであり、大きな補強の必要性はありません。
後ほど記載する業務用分電盤の場合には、住宅用分電盤と比較するとサイズも大きく、重量も重いため、補強が必要になることがあります。
理想的な設計等
分電盤設置の際には、できる限り経済的な面や電圧降下なども配慮し、各回路の末端までの配線長や、操作面も考慮した理想的な設計が求められます。
ただ、住宅用分電盤の場合には、よほどの大豪邸でもない限り、分電盤から末端負荷までの距離は長くありませんので、電圧降下を配慮する必要はあまりありません。
業務用分電盤(小規模店舗を除外)
ビルや商業施設、工場の場合には、外から高い電圧の電気を配電盤で受けた後、電圧を下げた電気を分電盤が各部屋やフロアに分ける役割を果たしています。
設置すべき場所
業務用分電盤の場合にはEPSの専用室に設置することが望ましいですが、場合によっては、事務室や通路などに設置するケースもあります。
維持管理を配慮した場所に設置することが重要です。
住宅用分電盤と比較するとサイズも大きくなるので、メンテナンススペースもしっかりと確保し、ドアの開閉や増設などの工事に対応できることを配慮することが求められます。
分電盤の前面には、少なくとも1.2mほどのスペースを確保することも設置の際の計画に入れておくことをお勧めします。
補強の必要性と方法
設置の状況によって、分電盤の設置時に補強を施す必要性があります。
たとえば、軽量壁に分電盤を設置した場合、壁が分電盤の重量に耐え切れずに落下するというトラブルに見舞われる可能性があります。
その際には補強が必要になります。
1.壁掛分電盤を軽量下地に設置する場合
大型の分電盤を設置する際には、自立型にすることも考える必要があります。
コンクリート壁を取付の面にする場合には、適正なアンカーボルトやドリルアンカーを使用して壁面に分電盤が落下しないように強固に取付します。
コンクリートは強度が高いので、分電盤の側面の側には特に補強は不要です。
2.ブロック壁に分電盤を取り付ける場合
ブロック壁はコンクリートと違って壁面に十分な強度がない場合もあるため、ブロック内部に鉄筋の部分にアンカーを溶接し強度アップを図ります。
また、ブロックを貫通させ、フラットバー(平鋼)やダクターチャンネルを使い、挟み込みすることでも強度アップが図れます。
理想的な設計等
分電盤設置の際には、できる限り経済的な面なども配慮し、理想的な設計が求められます。
例えば、分電盤は内面積500㎡~800㎡に一ヶ所ずつを目安に設置し、末端負荷までの距離は50m以下として、電圧降下を2%程度以内として設計すると、経済的・効率的になります。
また、分電盤は可能な限り負荷のかかる中心部分に配置するように設計することにもメリットがあります。
ひとつの分電盤で管理する範囲があまり広くなってしまうと、分電盤から各機器までの距離が長くなるため電圧の降下が起こり、維持管理上も好ましくありません。
理想としては、分電盤は各階1個を基本とし、1階にある分電盤で2階まで管理するのは推奨されません。
内線規程が推奨する感震遮断機能付住宅用分電盤について
ここでは、内線規程が推奨する感電機能付住宅用分電盤の規定、内線規程で使用される用語について解説します。
また、内線規程により推奨される分電盤に使用する感電ブレーカーについても併せて掲載します。
内線規程 配電盤及び分電盤
平成27年3月の大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会に基づいて、経済産業省からの要請により定めた規定が、内線規程の1365節-10として、感震遮断機能付住宅用分電盤として規定されています。
※ 参照元 内線規程 JEAC 8001-2016 2019年 追補版(https://store.denki.or.jp/user_data/JEAC8001_2016_tsuiho2019.pdf)
その中より、下記の通り、勧告と推奨事項を抜粋しました。
- 「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などの施設
- 「地震時等に著しく危険な密集市街地」の住宅などの施設の住宅などには、感震遮断機能付住宅用分電盤を施設すること(勧告)
- 「地震時等に著しく危険な密集市街地」以外の住宅などの施設
- 「地震時等に著しく危険な密集市街地」以外の住宅などの施設の住宅などには、感震遮断機能付住宅用分電盤を施設すること(推奨)
※ ここでいう住宅などには、住宅のほかに、住宅用分電盤を施設する店舗、事務所なども含みます。
内線規程で使用される用語
内線規程の中では、重要度に応じて、紹介から義務の4段階に分けて表記をされています。
重要度 | 高 | 義務 | 電気設備の技術基準の解釈に規定してある事項及び解釈では規定されていないが、専門部会(日本電気技術規格委員会需要設備専門部会)が審議した結果、施工上保安に関して必要であると判断した事項 |
---|---|---|---|
↓ | 勧告 | 電気設備の技術基準の解釈では規定されていないが、専門部会(日本電気技術規格委員会需要設備専門部会)が審議した結果、施工上保安に関して配慮を要すると判断した事項 | |
↓ | 推奨 | 電気設備の技術基準の解釈では規定されていないが、専門部会(日本電気技術規格委員会需要設備専門部会)が審議した結果、サービス上、経済上その他特に推奨する事項 | |
低 | 紹介 | 安全のため紹介された事項 |
感震遮断機能付き住宅用分電盤の感震ブレーカとは
感震ブレーカは、震度5強以上の地震を感知し電気をストップすることで、地震の後に発生する通電火災に備える機能を持っています。
大きな地震が来ると送電線の保安点検のために一時的に停電になることがあります。
そして、電気が復旧しストーブに通電した際に、火災が起こることなどの二次災害の危険が潜んでいます。
最近の電気ストーブは、倒れると電源が切れるようになっているものが多いですが、地震でハンガーラックなどが倒れて、図1ように衣服が燃える可能性もあります。
図1.地震でハンガーラックが倒れ衣服が電気ストーブで燃焼
こんな時に、感震ブレーカを使用していれば、震度5以上の揺れを感知すると、ブザーが鳴り一定時間経過後に自動でブレーカがOFFとなり、電気の供給をストップします。
分電盤の設置場所についての疑問
以下に分電盤の設置場所等についての疑問をQ&A形式で掲載しました。
※ 各質問の枠の右端の∨をクリックして下さい
Q. トイレの中に設置してもいいの?
A. いいえ。「住宅に施設する場合にあっては、緊急時などに容易に立ち入ることのできない場所(便所内など)には施設しないこと」に抵触する可能性があります。
Q. お風呂場に設置して大丈夫?
A. いいえ。「浴室内などのように、湿気が充満するおそれのある場所には施設しないこと。」に抵触する可能性があります。
Q. 押し入れやクローゼットの中に設置して大丈夫?
A. いいえ。「戸棚の内部(配電盤及び分電盤として専用のスペースが確保されているものを除く。)や押入などには施設しないこと。」に抵触する可能性があります。
Q. リビングに設置してもいいの?
A. 大丈夫です。リビングは家族がもっとも長く過ごす場所で、ドアホンなどが設置されています。個人差はありますが、ドアホンやセキュリティなどの家のコントロールを1カ所にまとめたい方もおり、その場合、分電盤もリビングに設置するのはありです。もちろん見栄えの問題もあるので施工会社と連携が必要になります。
Q. キッチン周りに設置してもいいの?
A.大丈夫です。食器棚などの死角で見えにくくなるという効果と高さの調整をすれば、女性でも簡単に操作できる点がキッチン周りへ設置するメリットになります。ただし、湯気や油等が飛散し届く範囲に分電盤を設置することは好ましくありませんので、設置位置は十分に配慮しましょう。
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⇒ パナソニック 住宅分電盤 選定・販売ページ(コスモパネル フタ付分電盤 リミッタースペース無し)
⇒ パナソニック 住宅分電盤 選定・販売ページ(スッキリパネル フタ無し分電盤 リミッタースペース有り)
⇒ パナソニック 住宅分電盤 選定・販売ページ(スッキリパネル フタ無し分電盤 リミッタースペース無し)
まとめ
本記事のポイントをまとめます。
①電気回路を容易に操作できる場所
②開閉器付きの場合、容易に開閉できる場所
③露出場所
④安定した場所
押し入れ・トイレ・風呂には分電盤を設置しない
分電盤接地面に強度が足らない場合、補強する