【プロが解説】電線とケーブルの違いとは?その種類と記号も解説します

電線とケーブルの違いとは? 電線・ケーブル
電線 ケーブル 違い

この記事では、電線とケーブルの違いについてできるだけわかりやすく解説します。

電線ケーブルは、同じように電気等を通す目的で使用されますが、この二つには違いがあります。

そして、その種類も多岐にわたり、さまざまな用途で利用されています。

そんな電線・ケーブルについてその違いを知りたい方、購入に際して参考にしたい方は、ぜひ参考にしてください。

電線とケーブルの違いについて

実際にはもっとたくさんの分類がありますが、ここでは、電線・ケーブル(例:電力ケーブルと通信ケーブル)がどのように違うのかを実際の写真を見ながら解説したいと思います。

電線

電線は電気を通す目的で使用されるものの総称として呼ばれ、図1のように導体(電気を通す材料)を絶縁体(電気を通さない材料)で覆ったものを指します。

図1.電線について
電線とケーブルの違い 電線の構造

ケーブル

次にケーブルですが、複数の電線を外装(外皮:シース)で覆い一つに束ねて、強度や絶縁の性能をアップしたものです。

-外皮(シース)について-
外皮(シース)にはケーブル外側の被覆で絶縁体が濡れてしまったり傷んだりすることを予防する役割があります。
使用される材質はケーブルの種類や用途に合わせて適切に選択する必要があります。

図2は3本の電線を3つに束ねて外皮(シース)で覆ったタイプの電力ケーブルです。(電線の本数はさまざまです。)

図2.電力ケーブルについて
電線 ケーブル 違い 電力ケーブル

また、電力を送る以外で比較的身近にあるケーブルとして、LANケーブル(通信ケーブル)がありますが、これも電気信号を送るために使われるケーブルの一種です。

図3のようにLANケーブル(通信ケーブル)には8本の細い電線が組み込まれていることがわかりますね。

図3.通信ケーブルについて
電線 ケーブル 違い 通信ケーブル

種類と記号

電線及びケーブルには非常に多くの種類がありますが、その中で弊社でも取り扱いのある電線・電力ケーブル・通信ケーブルについて、表1にまとめて一覧表にしていますので、参考にしてください。

表1.種類・記号・名称 及び 用途について

種 類 記 号 名 称 用 途
電線 IV 600Vビニル絶縁電線 屋内配線用
KIV 電気機器用ビニル絶縁電線 盤内配線・機器用配線
DV 引込用ビニル絶縁電線 電柱からの引き込み用
電力ケーブル VVF ビニル絶縁ビニルシースケーブル(平形) 電灯・コンセント・他全般
VVR ビニル絶縁ビニルシースケーブル(丸形) 低圧引込等
CV 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 幹線・動力・電灯・コンセント
CVT 単芯3本より(トリプレックス)形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 幹線・動力
通信ケーブル AE 警報用ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 自火報設備P型の感知器
HP 耐熱ケーブル 非常放送設備・自火報設備幹線
FCPEV 着色識別ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル 構内通信回路・照明リモコン回路
FCPEV-S 着色識別ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの遮へい付ケーブル 構内通信回路のシールドが必要な環境で使用
CVV 制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル 警報線等
UTP LAN用ツイストペアケーブル LAN用

また、弊社ブログにさらに詳細なケーブルについての選定表が下記の通りございますので、ケーブルの選定の際にはぜひ参考にしてください。

電線ケーブル選定(許容電流・ブレーカー容量早見表)
電力用電線・ケーブル選定早見表 電力ケーブルの選定にお役に立てるよう、各電線および、ケーブルの許容電流の一覧を作成いたしました。 該当電線、ケーブルの仕上り外径や、ブレーカー目安、配管目安が分かるようになっています。 ただし、あくまで目安で...

電線とケーブルの基礎知識

ここでは、電線とケーブルに関する基礎的な知識について解説します。

導体の材質について

電線・ケーブルに使用されている導体については、そのほとんどをアルミニウムが占めています。

また、建築物に使用されるいわゆる内線用としては、銅の導体が一般的と言われています。

銅とアルミニウムの特徴

ここでは銅とアルミニウムの特徴をまとめてみました。

表2.銅とアルミニウムの特徴について

銅の特徴 アルミニウムの特徴
・電気伝導率が非常に高く電気を通しやすい ・一般には構内ケーブルには使用されず、送電線に広く用いられる
・市販されている一般的なケーブルに導体として使用され、絶縁被覆で覆った電線や、シースで覆ったケーブルとして販売されている ・金を除き銅についで電気伝導率が高く軽量である(銅の3分の1の重量)
・銅の伝導率は万国電気工業委員会で標準とされこれを導電率100%としている ・銅よりも密度が低く重量が軽いので長い距離を施設するのに向いている
・電気精錬で得られる銅導体の成分純度は99.96%以上と高い純度である ・酸化によって表面がアルミナ層で覆われ腐食に強い
・銅は常温、乾燥空気中でほとんど酸化しない ・銅よりも価格が安い(銅の1/3~1/2程度)

電気伝導率に関するもの(ほかの金属との比較等)

上記にも記載している電気伝導率について、少し解説してみます。

電気伝導率は、どの程度電気を通しやすいかを表す指標となる数値で、中学校の理科で学習した電気の通しにくさ、つまり電気抵抗を表す単位であるオーム(Ω)の逆数で表されます。

電気伝導率(導電率)の単位は1/(Ω・m)ですが、1/Ω=S(ジーメンス)という単位が使われ、S/m(ジーメンスパーメートル)という単位が使われています。

つまり、抵抗値が低くなるほど電気伝導率が高くなり、電気を通しやすくなるわけです。

わかりやすく図解と公式で解説すると、図4のような導体があった場合、

図4.導体について
電線 ケーブル 導体 電気伝導率 抵抗率

この導体の断面積A=π×r×r、抵抗率をρ(Ω・m)とすると、

電線 ケーブル 導電率 抵抗 公式

このことから同じ導体、つまり同じ抵抗率の導体であれば、以下のような結果になります。

・長くなればなるほど抵抗は大きくなる
・断面積(半径)が大きくなるほど抵抗は小さくなる

抵抗率と電気伝導率(導電率)が逆数の関係であることから、導体が長くなればなるほど、電気が流れにくくなり、断面積(半径)が大きくなるほど、電気は流れやすくなるわけです。

上記のことを踏まえて、

表3は電線にもっとも多く使用されている銅の電気伝導率(導電率)を100として、ほかの金属を比較したものです。

表3.各材料の導電率(20℃)と抵抗率

材料 導電率(%IACS) 抵抗率(10-6Ωm)
Ag(銀) 106.4 0.0162
Cu(銅) 100 0.0172
Au(金) 71.8 0.0240
Al(アルミニウム) 61.7 0.0275
Mg(マグネシウム) 38.3 0.0450
W(タングステン) 31.3 0.0550
Mo(モリブデン) 30.8 0.0560
Zn(亜鉛) 29.2 0.0590
Ni(ニッケル) 23.8 0.0720
Fe(鉄) 17.6 0.0980
Pt(白金) 16.3 0.1060
Sn(スズ) 15.1 0.1140
Pb(鉛) 8.2 0.2100
Ti(チタン) 4.1 0.4200

※1 引用元 導電材料の基礎(http://www.trc-center.imr.tohoku.ac.jp/64-Zumen.pdf

※2 %IACS: 国際標準軟銅(抵抗率 1.7241 x 10-8 Ωm)の導電率を100%とした指標

なぜ銅が使われるのか

表3の各材料の導電率(20℃)と抵抗率の表を見てもわかる通り、もっとも電気伝導率が高いのはAg(銀)です。

銀は電気伝導率だけでなく、熱伝導率にも優れ、柔らかくて柔軟性にも優れており、製品の利用メリットはかなり高いです。

そして、次に電気伝導率(導電率)が高いのがCu(銅)で、加工性にも優れており、さまざまな電化製品や調理器具などにも用いられています。

このように金属の性質として優れているAg(銀)ですが、実際に多くの電線やケーブルに利用されているのはCu(銅)です。

理由はやはり価格です

この記事を執筆している2022年7月後半の銀と銅の価格は

銀:87,400円/kg
銅:1,080円/kg

この価格差を見ると、なぜ銅が使われるのかわかりますね。

形状について

単線は1本の電線で作られており通信の安定性が高い反面、ケーブルそのものが固くなるので取り回しがしにくくなります

図5.単線の形状
電線 ケーブル 単線

そして、より線と同じ太さであれば、流せる電流は大きくなりますが、曲げに対しては弱い傾向があります。

より線は複数の電線が捻じられているケーブルで安定性は落ちますが、ケーブルが柔らかく取り回しがしやすいという特徴があります。

また、単線と太さが同じであれば流せる電流は小さくなりますが、曲げに強い傾向があります。

図6.より線の形状
電線 ケーブル より線

電線・ケーブルの太さの単位と許容電流

ここでは電線・ケーブルの太さの単位と許容電流について解説します。

電流・ケーブルの太さの単位について

電線にはそれぞれの太さに対応する単位が決められています。

日本で使用されている単位はSQ(スケア)と呼ばれJIS規格により規定されています。

SQ(スケア)は、先ほど紹介しました、より線の断面積を表すもので、断面積(平方ミリメートル)の英語読みである「square mili-meter」が語源となっています。

表4.電線の太さの単位の一覧表

SQ(JIS) 現場での呼称 断面積(mm2) AWG 備  考
0.2sq 0.205 AWG 22
0.3sq 0.324 AWG 20
0.5sq 0.519 AWG 18
0.75sq 0.823 AWG 16
1.25sq イチニイゴ 1.31 AWG 14 1.2mm
2sq ニスケ 2.08 AWG 12 1.6mm
3.5sq サンテンゴ 3.31 AWG 10 2mm
5.5sq ゴウテンゴ 5.26 AWG 8 2.6mm
8sq ハチスケ 8.37 AWG 6 3.2mm
14sq ジュウヨン 13.3 AWG 4
22sq ニジュウニ 21.15 AWG 2
38sq サンパチ 33.63 AWG 1

上記中の「現場での呼称」は、まさに作業現場でやりとりされている略称です。

また、SQは日本のJIS規格ですが、アメリカではAWGとAmerican Wire Gaugeの略称になりますので、気を付けましょう。

そして、VVFなどのケーブルの場合には、SQを使わずmmを利用しているものもあります。

表の中にそのサイズにほぼ対応しているSQと対比させるために、表内に記載しています。

導体に流れる許容電流について

導体に流れる電流はその太さによって流せる電流の許容電流が決まっています。

当然ながら、許容電流の上限があるということは、それ以上の電流が流れるとトラブルが起こります。

導体に電流が流れると導体は熱を持つことから、ある限界を超えると絶縁体が燃えてしまい、電線の近くに可燃物があると火事につながるので大変危険です。

また、先に解説したように電線には単線とより線があり、同程度のサイズであっても流せる電流に差が生じるということを知っておきましょう。

表5.導体の直径及び断面積と許容電流について

単線 直径(mm) 許容電流(A)
1.6 27
2.0 35
2.6 48
3.2 62
より線 断面積(mm2) 許容電流(A)
2.0 27
3.5 37
5.5 49
8.0 61

※1 引用元:電気設備の技術基準の解釈(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/dengikaishaku.pdf)

※2 低圧配線に使用する、600Vビニル絶縁電線、600Vポリエチレン絶縁電線、600Vふっ素樹脂絶縁電線及び600Vゴム絶縁電線の許容電流 

絶縁体の種類と耐熱温度

絶縁体は金属のように電気をよく通す物質である導体と対比させ不導体とも言いますが、電気や熱などを通しにくい物質の総称です。

人の手に触れるところに電線を使用する場合、この絶縁体で覆われていないと感電してしまいます。

ただ、どのような材質の絶縁体にもその限界はあり、過剰な電流が流れると熱等により発火等の原因となります。

絶縁体にはビニル・ゴム・ガラス・プラスチックなどがありますが、電線で多いのはポリ塩化ビニル架橋ポリエチレンなどが使用されています。

表6は電源電線に使用される電気絶縁物又は熱絶縁物の種類と適用温度の一覧です。

表6.電源電線に使用される電気絶縁物又は熱絶縁物の種類と適用温度について

種類(材料名) 温度
天然ゴム混合物 60
ポリウレタンゴム混合物
塩化ビニル混合物
クロロプレンゴム混合物 75
スチレンブタジエンゴム混合物
耐熱ビニル混合物
ポリエチレン混合物
ポリオレフィン混合物
ブチルゴム混合物 80
エチレンプロピレンゴム混合物
耐燃性エチレンゴム混合物
クロロスルホン化ポリエチレンゴム混合物 90
架橋ポリエチレン混合物
架橋ポリオレフィン混合物
けい素ゴム混合物 90
四フッ化エチレン樹脂混合物 90

※ 引用元:別表第十一 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値 (https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/beppyoudai11.pdf

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まとめ

本記事のポイントをまとめます。

ポイント電線とケーブルの違いのポイント
 ① 絶縁体で導体を覆ったものが電線で、電線をシースで被覆したものがケーブル
 ② 導体の材質は銅とアルミニウムが中心で、特に銅を使用するケースが多い
 ③ 電気伝導率(導電率)がもっとも高いものは銀で次に高いのが銅(銅を100とした比較表あり)
 ④ 電線・ケーブルの太さの単位は主にSQ(JIS)が使われる
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